咳・喘息の原因を漢方的に分類してみた!

てんちょう
てんちょう

こんにちは、さくら薬品のてんちょうです。

咳(せき)はうっとうしいですよね。なんか体力もすごい持って行かれるような気もするし・・・

咳についての漢方勉強会があったので、咳の原因を漢方的にざっくりまとめてみました!

 

咳(せき)とは

咳は生体が異物を外に排除するための防御反応の一種であり、むやみに止めるべきではありません。しかし、咳は体力を消耗し、また患者のQOLを下げる要因にもなります。

それらを踏まえて、咳に対する対応は・・・
急性発作時や、感染症などが明らかであれば、現代医学的治療(抗生剤等)を優先すべきと考えます。
その上で咳の症状を抑えるために漢方薬を使用することは十分に有用である(急性・慢性とも)と考えます。
一般的な咳止め薬で治まらない咳でも漢方が奏効するケースがあるので、漢方という選択肢を持つこともおすすめします。

また、漢方薬は、慢性化した咳、カゼの後で残る咳、實解期のコントロール、発作予防、体質改善に関しても有用性が期待できます。

QOL=Quality of life(クオリティ オブ ライフ)は「生活の質」「生命の質」などと訳され、患者の身体的な苦痛の軽減、精神的、社会的活動を含めた総合的な活力、生きがい、満足度という意味が含まれます。

ということで、漢方医学的には「咳(せき)」の原因をどのように考えていたのか、ざっくりまとめてみました!
それでは、れっつごー!

漢方的な咳の原因

肺の乾燥

肺が乾燥することで咳が出現します。
肺はそもそも乾燥に弱い性質があり、気候や空調の影響も受けやすいです。

特徴:
乾性咳嗽、
無痰または少量の粘稠痰、
気道~咽喉の乾燥感、
鼻腔粘膜の乾燥、
手足のほてり、
気候・空調による乾燥で出現・悪化
・痰がない、あるいは少量の粘稠痰を伴う
・気道、鼻腔、口腔の乾燥感がある
・乾燥した環境、気候で出現・悪化する

麦門冬湯滋陰降火湯竹葉石膏湯など

 

肺の痰飲

肺に痰飲(水の病理産物)がたまり、肺の機能が失調して咳が出ます。
肺と相生関係にある脾の影響も受けやすく、脾虚を伴うケースも多いです。

特徴:
湿性咳嗽、
水っぽい痰(比較的多量)、
湿度で出現・悪化、
胃内停水(背景に脾虚が多い)
・比較的多量の水様の痰を伴う
・胃内停水傾向、歯痕舌
・高湿度で出現・悪化

小青竜湯参蘇飲蘇子降気湯など

 

肺の熱

肺に熱がたまることで咳が出現します。
現代医学的には炎症傾向が強いととらえることもできます。

特徴:
黄色い粘稠痰、
温めると悪化、
呼吸器の炎症所見が強い、
高熱を伴う、
口渇がある
・黄色い粘稠痰を伴う
・呼吸器の炎症、高熱を伴う
・温めると(布団に入るなど)出現・悪化

麻杏甘石湯竹葉石膏湯など

 

肺の冷え

肺が冷えることで機能が失調し、咳が出ます。
冷えると疫飲を生じやすくなるため、肺の疲飲を伴うことが多いです。

特徴:
湿性咳嗽、
水っぽい痰(比較的多量)、
冷えで出現・悪化
・比較的多臺の水様癌を伴う
・冷え、寒冷刺激で出現・悪化

小青竜湯参蘇飲など

「肺の乾燥」と「肺の熱」、
「肺の痰飲」と「肺の冷え」、
の組み合わせは併存しやすい。

 

肺気虚

肺気が不足することで肺の機能が低下し、咳や息切れなどが出現することがあります。
全体的な気虚や脾虚を伴うことも多いです。

特徴:
息切れ、
声に力が無い、
汗をかきやすい、
易感染、
疲労倦怠感、
疲労で出現・悪化
・息切れ、声や目に力がない、易感染、多汗など気虚・肺気虚の症状
・疲労で出現・増悪する
・慢性的な呼吸器疾患・症状で、呼吸機能が低下している

補中益気湯人参養栄湯など

 

腎虚

腎虚によって呼吸器症状を起こすことがあります。
腎には納気作用(吸った息を丹田に納める)があり、それが不足することで吸気を中心に呼吸機能に乱れが生じるためです。

特徴:
いわゆる腎虚症状(腰痛、下肢痛、排尿異常等)を伴う、
息を吸いにくい
・腰や下肢の痛み・だるさ、
排尿異常(尿量異常、排尿困難、失禁など)、
加齢現象が進んでいる、
高齢などの腎虚症状がある
・吸気しにくいという症状がある

味麦地黄丸など

 

気逆

気の巡りが乱れて逆行(上逆)することで咳が出現します。
上に逆行しているため、気が下半身に巡っていないことが多いです。

特徴:
冷えのぼせ(上熱下寒)、
顔面紅潮、
発作性の咳、
乾嘔(からえずき)
・冷えのぼせがある
・顔面紅潮、のぼせ、乾嘔(からえずき)を伴う
・発作性の咳嗽

苓桂味甘湯蘇子降気湯など

 

咳・喘息に用いる処方

麦門冬湯(肺を潤す代表処方!)

肺の乾燥を潤す代表処方です。

ポイントは、

①肺の乾燥タイプによい(痰飲タイプには逆効果)
②寒熱にはあまり働かない
⑧急性期にも慢性期にも使える
④虚証傾向にも使える
⑤顔を真っ赤にして咳込むようなタイプにもよい

イメージは、
急性 ○ 慢性 ○
肺乾燥≫肺気虚>肺熱・気逆

 

滋陰降火湯(肺の乾燥に、その他の陰虚・血虚を伴うものに)

肺の乾燥を潤す処方ですが、もう少し広い範囲で陰虚を補います。

ポイントは、

①麦門冬湯タイプに近い
②さらに便秘・皮層乾燥・血虚傾向を伴う
③皮層が浅黒い人に合うことが多い

イメージは、
急性 △ 慢性 ○
肺乾燥≫肺熱>腎虚>肺気虚

竹葉石膏湯(風邪の後、ダラダラ続く咳に!)

麦門冬湯に似ていますが、軽い清熱作用が加わっています。
風邪の後などで軽い肺熱や炎症が残っている場合に奏功します。

ポイントは、

①麦門冬タイプだが、肺熱・炎症を伴う
②風邪の後にしつこく残る咳に良い
③吐気を伴う場合にもよい

イメージは、
急性 ○慢性 ○
肺乾燥>肺熱>気逆>肺気虚

 

麻杏甘石湯(肺熱の代表処方!)

肺熱に対する代表処方です。

ポイントは、

①主に急性期に使用し、即効性もある
②粘稠痰がからむことが多い
③口渇・自汗を伴うことが多い
④呼吸困難がある場合にもよい
⑤基本的に実証向け

イメージは、
急性 ○ 慢性 ×
肺熱≫≫肺痰飲・肺乾燥>気逆

 

小青竜湯(肺の冷えの代表処方!)

肺の冷えを温める代表処方です。

ポイントは、

①水様の痰や鼻汁を伴う
②ゼロゼロという喘鳴を伴うこともある
③抗アレルギー作用に優れ、アレルギー疾患に頻用される(喘息・鼻炎で水様痰・水様鼻汁が多いタイプに!)
④急性期に使うことが多く、即効性もある
⑤感冒、鼻炎にも使用できる

イメージは、
急性 ○ 慢性 △
肺寒・肺痰飲≫≫≫気逆

 

小青竜湯合麻杏甘石湯(マキセリン)(急性咳嗽の「とっておき処方」!)

咳によく効く2つの処方の合方です。
もともと水様嬢だったものが粘稠になってきた場合などが最も適するタイプですが、水様痰~粘稠痰まで幅広く対応します。

ポイントは、

①急性咳嗽に対し幅広く対応でき、即効性もある
②呼吸困難にも効果がある

イメージは、
急性 ○ 慢性 ×
肺痰飲・肺熱・肺寒≫≫≫肺乾燥>気逆

 

参蘇飲(胃腸虚弱者にも使える肺寒の処方!)

補脾の働きにも優れた処方です。

ポイントは、

①小青竜湯タイプで胃腸の弱い人に使える
②風邪にも使用できる
③妊婦の咳・風邪にも使いやすい(麻黄が配合されていない)
④長期投与も可

イメージは、
急性 ○ 慢性 ○
>肺痰飲>肺寒・肺気虚>気逆

 

半夏厚朴湯(胃腸虚弱者にも使える肺寒の処方!)

気滞(気欝)の代表処方として知られていますが、気を降ろす作用(それほど強くはない)や水をさばく作用もあるため、咳・喘息にも使われます。

ポイントは、

①湿性咳嗽、水様痰を伴うケースに使う
②咽や胸のつかえを伴うことも多い
③抑うつ傾向、神経質傾向などを伴う場合にもよい

イメージは、
急性 ○ 慢性 △
>肺痰飲>気逆

 

柴朴湯(喘息寛解期の頻用処方々)

半夏厚朴湯と小柴胡湯の合方。
半夏厚朴湯の効果に、抗炎症作用や抗アレルギー作用が強化されている感じです。

ポイントは、

①半夏厚朴湯タイプ全般に使うことができる
②喘息の寛解期に使用して、発作の予防効果が期待できる
③胸脇苦満がある人にも良い
④ストレスで増悪するケースにも良い

イメージは、
急性 ○ 慢性 ○
>肺痰飲>気逆>肺熱

 

蘇子降気湯(気逆・痰飲による咳・喘息に!)

名前の通り、気逆を治すのに優れています。
気を巡らせ、疲飲を除くのにも優れています。

ポイントは、

①上盛下虚(上半身ののぼせと下半身の冷え・だるさ)がある
②冷えや水様痰を伴う場合にも良い
③咽や胸のつかえがある人にも良い
④虚証の人にも使える
⑤ストレスで増悪するケースにも良い

イメージは、
急性 △ 慢性 ○
>肺痰飲・気逆>腎虚・肺寒>肺熱・肺気虚・肺乾燥

 

苓桂味甘湯(強い気逆による咳・喘息に!)

気逆の代表処方の一つ。強力に気を降ろす作用があります。
五味子によって鎮咳作用が強くなっています。

ポイントは、

①気逆が関与する急性あるいは発作性の咳嗽に適している
②のぼせや顔面紅潮が現れることが多い
③蘇子降気湯と比べて、気逆への効果はやや高いが、痰飲を除く作用は弱い

イメージは、
急性 ○ 慢性 △
気逆≫≫腎虚・肺痰飲

 

味麦地黄丸(腎虚が関与する咳・喘息に!)

腎虚が関与する呼吸器症状に対する代表処方。
補腎(六味丸)しながら肺を潤し(麦門冬)、咳を止める(五味子)働きがあります。

ポイントは、

①いわゆる腎虚症状(腰・下肢痛、排尿異常、加齢の影響など)がある
②吸気しにくい
③気道乾燥傾向がある
④喘息、COPDなどの慢性呼吸器疾患で呼吸機能や体力が落ちているも
のにも良い
他の処方(直接呼吸器症状に効くもの)と併用するのも良い。

イメージは、
急性 △ 慢性 ○
腎虚>肺乾燥≫肺気虚>気逆

慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。
タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患であり、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病といえます。

補中益気湯(肺気虚による呼吸器症状に!)

気虚の代表処方であり、肺気虚を補うのにも優れています。

ポイントは、

①直接呼吸器症状を抑える作用は少ない
②肺気虚の特徴(易感染、多汗など)が顕著
③いわゆる気虚・脾気虚(倦怠感、胃腸虚弱、疲労で増悪など)がある
④他の処方と併用して、体力的ベース作りに使うこともできる
他の処方(直接呼吸器症状に効くもの)と併用するのも良い

イメージは、
急性 △ 慢性 ○
肺気虚≫腎虚>肺痰飲

 

人参養栄湯(肺気虚に血虚を伴う場合に!)

気血両虚の代表処方であり、肺気虚を補うのにも優れています。
五味子が配合されているので、呼吸器症状に用いるのに適しています。

ポイントは、

①補中益気湯と同様に使える
②さらに血虚(貧血傾向、皮層乾燥、顔色不良など)を伴う場合にも良い
③鎮咳作用もある程度期待できる
④脾気虚が顕著なら、補中益気湯の方が良い
他の処方(直接呼吸器症状に効くもの)と併用するのも良い

イメージは、
急性 △ 慢性 ○
肺気虚≫腎虚>肺乾燥>肺痰飲

 

玉屏風散(肺気虚を補う専門処方!)

肺気虚を集中的に補う処方です。

ポイントは、

①肺気虚(多汗、易感染、呼吸機能低下)に対し、効果が高い
②脾気虚を補う作用は弱い
③感染症による呼吸器症状の増悪を防ぐのに優れている
他の処方(直接呼吸器症状に効くもの)と併用するのも良い

イメージは、
急性 △ 慢性 ○
肺気虚≫≫肺痰飲>腎虚

 

最後に

咳といえど、漢方ではたくさんの処方がありますね。
お客さまの症状がどれに当たるのかしっかりとお話しを聞かせていただきたいと思います。
また、一部の処方は取り寄せになります。お時間をいただくこともありますのでご了承ください。